大判例

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東京高等裁判所 昭和49年(ラ)163号 決定

2、ところで、およそ法人格の付与は、社会的に存在する団体について、その価値を評価してなされる立法政策によるものであって、これを権利主体として表現させるに値するときに、法的技術に基いて行なわれるものであり、従って、法人格が全くの形骸に過ぎない場合、または、それが法律の適用を回避するために濫用される場合においては、法人格を認めることは、これを認めた本来の目的に照らして許すべからざるものというべきである(最高裁判所昭和四三年(オ)第八七七号、同四四年二月二七日第一小法廷判決)。

前記認定の事実関係のもとにおいては、相手方会社と光苔株式会社とは、営業目的が同一であるほか、両会社の株主および役員は形式的には共通ではないけれども、実質的には小野寺文栄、文志の兄弟が支配株主および役員であり、しかも両会社のその余の株主も右小野寺文栄、文志の弟、姉妹の婿、母もしくは幹部職員で占められていて、両会社の実体が実質的には同一であり、しかも前記小野寺文栄、文志の兄弟が抗告人会社に対する債務の執行を免れる目的ないし意図を有して相手方会社を設立したものと解するのが相当である。従って、かゝる場合には、抗告人会社は、相手方会社の法人格を否認し、相手方会社と光苔株式会社とを同一会社であるとみなし、光苔株式会社に対する債権をもって相手方会社に対しその履行を求めうるものと解するのが相当である。<中略>

実体的には相手方会社の法人格を否認しうる要件が備っており、従って、光苔株式会社に対する債権をもって相手方会社に対する債権と同一視しうる場合においても、光苔株式会社に対する債務名義をもってそのまゝ直ちに相手方会社に対し執行することは許されない。即ち、訴訟手続および強制執行手続には、制定法主義を基調とする手続の明確性の要請があり、債務名義の効力はその名宛人以外には直接及ばないと解すべきであるからである。従って、名目上相手方会社の所有している財産に対して仮差押を執行するためには、相手方会社に対する仮差押決定を得なければならない。そのため法人格を否認しうる場合、責任財産の名目上の帰属主体がいずれか一方であることが判明すれば、その者に対して、またいずれであるか明らかでない場合には、その両方に対して共同してまたは各別に、仮差押決定を申請して債務名義を得ることが許され、またその必要があるものと解するのが相当である。

(石田哲 小林定 野田)

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